
まほろば 唐津の入江
- 発表年
- 2021年
- サイズ
- F120
- 出展
- 第35回記念日洋展
作品について
このところ日洋展の九州移動展には毎年出掛けている。熊本は特に5年前に震災もあり、東日本大震災の10年からスタートしたぼくの絵のテーマでもある「美しい風景と鎮魂」の核となる舞台でもあるからだ。しかし悲しみの記憶は何も震災ばかりではない。玄界灘を望むこの美しい唐津湾にも、命をかけて遣新羅使として旅立つ大伴狭堤古と村の長者の娘佐用姫との悲恋万葉歌がある。今回特にこの歌2首とその解説文を、構図上手前の虹の松原から少し誇張して配した鳥島を回り込むように画面は時計回りに展開する構図にしたため横雲の中の万葉歌は左から始まるように入れた。ちなみに2首の歌は、海原の/沖ゆく船を/帰れとか/領巾振らしけむ/松浦佐用姫(巻5 874)行く船を/振りとどみかね/如何ばかり/恋しくありけむ/松浦佐用姫(巻5 875)である。そして、この万葉仮名はぼくの絵の色面効果として用いている。
一昨年肩鍵盤断裂で2ヶ月入院した時も左手でスプレーを使ってみたり、般若心経を入れてみたり、利き手が使えない焦りの中で夢中だったが、今回はコロナ禍で個展もままならぬ状況の中いろいろ試せることは創造に生きる者としてかえってありがたい時間と思うことにしている。そして、この絵を、今現在さらに継続されている東京都の緊急事態宣言が解除され、美術館が開いて、みなさんにみて頂けることを只々願うばかりである。