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絵かきの姿勢 岡田征彦兄の場合

出典:日洋会便り 第12号 / 2026年1月発行

第118回日展をみた。いつも通り初回は流して歩いた。1室・2室、3室にぼくのはあったが、確認して4室へ。ここは少し狭い部屋で、今年の審査員が閉じ込められたように並んでいるのは気の毒だった。そして重鎮の5室から長老の6室へ。その中央にひときわ目を引く、青色が美しい岡田さんの絵はあった。

「2022・月明かりの怯えていた街」というタイトルを気にしながら絵を覗くと、東京タワーらしき緑色の鉄塔が真ん中に小さく、その上に下弦の月がラピスラズリ色の寒む空の中で大きく潤んでいるように輝いている。絵の具はルフランで、コバルトブルーが大量に太筆でたっぷりと塗ってあった。さて、ここまでの展示作の中に、シュミンケはもとよりルフランを使っているような絵が一枚でもあっただろうか。そういう点でも岡田流こだわりが凛として異彩を放っている。

2022年はコロナ流行の只中、これは多分グリーンリボンデーで、東京タワーが緑色にライトアップされるその夜の記憶だろう。画家は、臓器移植や感染症など多くの命が救われることを願うイベントカラーに染まった東京タワーを目黒区の自宅付近で偶然目撃して即座に心に焼き付けたに違いない。月明かりの怯えていた街という画題に込めたコロナ禍の人びとの不安を、青と黒との不吉な色彩と相まって、絵は世相の代弁者のように訴えかけてくる。

笠井誠一先生は生前、日本でキュビズムを継承できるのは岡田征彦だけだとおっしゃっていたが、この絵は今やそういう枠からも解放され、自由な表現と秩序を保ち、身体を酷使しても挑戦し続ける岡田絵画の結実だと思った。脱帽だった。

作品・資料画像
2022・月明かりの怯えていた街
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